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バイク - 新原付一種規格?の話

young-machine.com

最近この話題をちょいちょい見るようになった。

この規格について正式名称みたいなものはよくわからないので、ここでは

「新原付一種規格」

と仮称する。

あくまで環境規制対応のため・・・らしい

エンジンの排気量は125ccでも出力をリミッターで絞って原付一種クラスに押さえ込む。排ガス規制を通すためのキャタライザはある程度の発熱があって動作できる。125ccなら数十秒でそこに達するが50ccでは数分必要となり規制に通らない。

  • 「排気量」の概念の無い電動(EV)は最高出力でクラス分けしている
  • 原付二種クラスはなんとか環境規制に対応できているが50ccでは難しい
  • 原付二種クラスの排気量でも原付一種クラスの出力なら原付一種ってことで良くね?

『50ccで無理なら125ccで原付一種作れば良いじゃ無い』 by マリー。

まぁ、たしかに理屈は解る。
解るが、その理屈を実際にやろうとなると、いろいろと問題も思いつく。

リミッタ解除への対策

従来のバイクにメーカーが仕掛けていた速度リミッターはあくまでメーカー側の「自主規制」の範疇の中にあった。排気量クラス毎の馬力規制もすべて「自主規制」であって法的に義務づけられているものでは無い。
今時のFI車であれば、出力にリミッターをかけるならECUで制御が可能だろう。ガソリンエンジン車ではエンジンの排気量に(シリンダー・ピストン)に相当する車体への“制約”はほとんどECUが司ることになる。「自主規制」ではないこのリミッター、扱いはどうなるのか。何が考えられるか。

つまりECU変更によるお手軽ボアアップ」が可能になりかねない

もちろん、旧来のように50ccバイクのシリンダーとピストンを交換してボアアップするのと法的な意味は同じで、そのまま隠して乗っていれば違法改造1。申請すれば原付二種としてナンバー取得することができるだろうが、物理的にボアアップを行うことの技術的な敷居の高さはまったく異なる
原付一種ナンバーのままこっそりボアアップする2のは無免がパワーとスピードを求める昭和の「原チャリ小僧」発想だが、しかし原付二種扱いのはずのバイクに原付一種ナンバーをつけるのは「脱税」でしかない。その差が数千円であろうと脱税は脱税だ

この事実上のボアアップに対する対策をどこまで取ることができるのか、まずそこがキモになってくる。

『いやいや、電子的なリミッターだけじゃなくて機械的なリミッターかけられるの知らねぇのかよド素人かOballyは』

はい、知ってます。

例えばクランクシャフトにわざと高回転まで回らないような加工をいれるとかね。同じ(キャブ時代の)横型シリンダのカブ系エンジンでも、モンキーにはそういう設計になっていたりするって話。

でもさ、それってどこまでコストかけて別部品化するの?

50cc相等でも安くない

ユーザが50ccクラスに期待するのは何か。

  1. 原付免許で運転できること
  2. 駐輪場の制限のため原付一種であること(「停められるのは50ccまで」という駐輪場の存在)
  3. 上位クラスのバイクより安いこと

「1. 原付免許で運転できる」つまり自動二輪免許を取得していない人が乗れるというのはもちろんの話。

「2.駐輪場の制限」についてはわりと(都市部以外では)レアな条件になる。とはいえ、「50ccまで」という制限をもうけている理由は排気量そのものより「原付ぐらいのサイズでないと入らない」というサイズの問題であることが多い気がする(あと消防法絡みで原付とそれ以上で違いがあるようだが詳しく調べていない)。サイズの話であれば「原付二種サイズの50cc」となるので新規格原付一種はやっぱり停められないという話になる。

免許の問題の次に大きいのは「3.原付二種より安上がり」というやはり値段の問題だろう。
車体価格はどうやってもベースの原付二種より大幅に安くすることはできない。税金も年間2~3000円程度でランニングコストも大差なし。
ベースになるのは排気量の近い110ccにリミッターをかけるのが自然に思える。少なくともホンダは原付一種と原付二種で共通車種(カブ系やベンリィ等)の存在する110ccエンジンがベースになるのは既定路線と考えられる。当然、50cc専用車種は消滅することになるだろう。車体やエンジンが原付二種クラスと共通で違いはわずかだけなので専用車種を出す意味が無い。つまり、違いがほとんど無いので原付二種クラスと価格はほとんど変わらなくなる

現在、原付二種クラスの新車は安くても25万円より上になってしまう。モンキー125の44万円ですら、当時は「高い」という声も多かったが、ホンダの125ccラインナップがこの辺を上限にバリエーション展開してからはそれが当たり前になってきたが。

もし新原付一種規格の値段を「赤字覚悟で50ccと同等に」したらどうなるか。

・・・ECU交換(またはROM書き換え)して原付二種化、つまり本来より安く原付二種クラスのバイクを手に入れることができる可能性がでてくる。

前述の「脱税」の話とは別な形でリミッターの話になるし、どっちかっていうと「メーカーとしてそれは許容できるの?」って話になるが。

原付一種と二種の価格差をどう作るのか、そもそも作れるのか。作るとしたらエンジンのみ原付二種クラスでその他車体各部は既存の原付スクーターを流用することになるが、大きく重くなったエンジンに耐えられるように改変する必要が出てくる。

www.honda.co.jp

今のホンダの原付スクーターで最安なのはタクト(もう50ccでも水冷なのか)の18万円。ここからフレームの強化などの変更をかけて20万以下に収まれば、なんとか・・・って感じじゃ無いだろうか。そこまでするならやはり最初から共通設計にした方が・・・ってなるだろう。

 

えー、皆様すでにお気づきかと思いますが、もはや環境対応とかそういう話では無く『いかに原付一種クラスの開発コスト・原価を減らせるか』という話すり替えている訳だが、この辺は後述する。

『なぜほかの排気量クラスでも同様に出力ベースにしないのか』

ガソリンエンジンでも出力ベースで考えれば排気量関係なくね?』

そういう話なら、

『原付一種に限らず普通自動二輪大型自動二輪にも適用しないのはおかしくね?』

と言わざるを得ない訳で。

実際の所、国内向けのバイクならクラス毎に出力の「自主規制」というものが長い間続いていたが、最近になってそういったしがらみが薄れてきたところだ。今回の話でいけば過去に戻るような流れになりそうでなんかヤだな、と。

なぜ「ヤだな」なのか。

そのクラスの上限を出力で決定すると言うことは、「パワーが無いなら排気量上げれば良いじゃ無い」というわりと安直なアプローチで達成できてしまう。限られた排気量の中でより高出力を達成するというのはバイクを開発する側としてはおそらく自然なことであり、技術的挑戦の賜であり、バイクという「趣味の乗り物」を送り出すメーカーとしてはそうあってほしいという個人的ではあるけど俺の・・・まぁ老害的思想と言われても文句は言えないなコレは。

EVバイク普及までの「繋ぎ」

で、いろいろうがった見方をしているわけだが、これは昨今のバイクメーカーに対する
ガソリンエンジン車50ccってEV普及するまでの繋ぎでしか見てないだろ?」 という偏見(といいつつ実際の所そうなんでしょ?)っていう。

可能な限り50ccを新規開発したくないメーカーの意図は(先に挙げたOEMの件など)すでに現れてきているが、原付一種のバイクが低価格前提である以上、薄利多売にならざるをえないのは解る。
主なユーザが求める「日常の下駄」たる原付一種では低価格を維持せざるを得ないが、原付二種以上になれば一気に「趣味の乗り物」としての立ち位置がでかくなり、プレミアム要素が入ってもそれなりに売れる。

確かに、近距離で完結できるシティコミューターとして考えれば、自宅で給電可能なEVは要件を満たすし、GSに行かなくても良いという面では悪くない選択肢に思える。それ以上を求めれば給電インフラの普及が進んでいない以上めどは立たない。

  • 原付一種はEVに完全シフトしたい
  • 完全シフトするのだから今更ガソリン車に新規開発コストをかけたくない
  • 量産効果によってEV原付の価格が落ちるまで粘れ!

つまりそれまでの繋ぎという戦略なんだろう、と。

これらはあくまで自分の想像でしか無い。そんなにうまくいくもんなんだろうか。
っていうか、そもそも原付一種って、今そんなに需要あるのか?

排気量の区切りでいけば50ccがもっともエントリーな免許区分な国は少ない。つまりメーカー的にはそのまま海外に展開できず、(多くの国でエントリークラスである)125ccと比較したらインナップを増やしづらい。それでも日本国内で売れるのであればメーカーも乗り気になるはずだが、現実はモデル数は減るばかりでOEM供給でホンダとヤマハが組まざるをえないという程度には売れていない。
つまり「そもそも原付一種が売れていない」ということで、これをEVに置き換えようがやっぱりそんなに多く売れねぇんじゃね? というのが個人的な見解だ。

否定はしない

「環境対応」の話から「開発費低減」へ話を意図的に換えてみたが、そもそもの「排ガス規制をクリアできない」という問題そのものが「もう50ccで対応できるキャタなんて無理じゃん」であって、それを言い換えれば「そんな所にもう開発費かけたくねぇよ」の裏返しな訳。
メーカーは、原付一種を薄利多売できない未来を見据えて、ガソリンエンジン50ccを完全に捨てるつもりなんだろう。そのための「繋ぎ」として原付二種クラスのエンジンを使うことそのものについては自分は否定しない(というかメーカー側の提案だしどうこう言える権限も何もない)。だけど、「繋ぎ」のための方策としては問題点が多すぎるんではないかな、と。最終的に50ccガソリンエンジンを最終的に「捨ててしまう」ものに対してなのに、結構な回り道が必要になるように思える。

そこまでして原付を継続させなきゃいけないんだろうか?


  1. 外観上から即座に解らないが、ECUだと下手をするとシリンダー交換よりわかりやすいかも。
  2. 原付の道交法的制限を考えるとこの点無意味だと感じるが。