鳴り物入りで登場し、予想外のヒット(買った俺ですらこんなに売れるとは思ってなかった)を飛ばした「KING JIM DM 10」から1年、ついに後継機「DM20」が登場した。
俺はDM10が出たとき、予備情報が全くない状態から突然存在を知り、決断するまでにずいぶん躊躇した。しかし今回のDM20については、ハードウェア的に変更が殆ど無いことと、ソフトウェアの機能追加の内容を見たうえで、即決してAmazonの受付開始と同時に予約を入れた。
ケースなどのアクセサリはそのまま使えるようだが、同時に純正アクセサリの「着せかえ天板」と「のぞき見防止シート」も注文した。
まだあまり使い込んではいないので、開封から一通りイジったところまでのレビューを。今回は写真多数なので重いかも。
ハードウェア
開封して気はじめに気がついたのが、バタフライキーボードの右側のガタがなくなっている点。DM10では右側のキーを強く打つとバウンドするような感覚があったが、DM20ではカッチリロックされてバウンドすることもない。
キートップが黒、プリントは金色になって全体的に精悍というか豪華な印象になった。もっともこれは手垢などで汚れが目立つことを軽減するためかもしれない。
外観で目を引くのがLCDの大画面化。ただし解像度は変わっていない。大画面化により、DM10より小さいサイズの20×20と16×16のフォントが選択できるようになった。ただ、これらのフォントはどうしても線が細くなってしまいちょっと見づらい。当分はDM10と同じ24×24ドットで使うつもり。
液晶サイズが大きくなったことで、画面外の枠が小さくなり、より一般的なPCのような印象をうける。
天板を外した状態。
天板は交換可能になった。着せかえパネル付属の六角レンチで天板固定ネジを付け外しできる。
着せかえ天板に対応したためか、液晶側が微妙に分厚くなっている。ただ、閉じたときにキーボード側と幅が同じになっているすっきり感からあまり気にはならない。
着せかえ用天板も同時発売されており、今回カーボンパネル調のものを同時購入した・・・のだけど、実はカーボンパネル"調"ではなく、本物のカーボンパネルだったりする。注文するときに「どうせカーボンパネルプリントだろうけど、いっそ後から本物カーボンパネル張ってみたりしたいなぁ」などと考えていた(たぶん同じことを考えていた人は多いだろう)のだけど、まさか純正で本物カーボンパネルで出すとは思わなかったなぁ。
DM10とDM20を重ねた状態。どちらも面積はほぼ同じで、DM10の下にDM20があるとはわからないぐらい。
サイズ変更がほとんどないので、DM10で使っていたケースがそのまま使えた。
左がDM10、右がDM20。底面はDM10から変更点はない。右側キーボードの支えもまったく同じ。ヒンジも幅が広くなり、すこし印象が変わっているぐらいか。
着せかえ天板と同時に発売されたDM20用「のぞき見防止」液晶保護シートも購入した。本当は「のぞき見防止」じゃなくても良かったんだけど、今のところこれしか出ていなかったため。
よくある「ケータイ用プライバシーシート」のように、斜めから見ると極端に暗くなる。そのぶん視野角も狭くなる。一長一短だけど、電車通勤で「ポメラタイム」な人には良いかもしれない。ちなみに正面の写真はいつも仕事で使っている「日報メモ」のテンプレートを開いた状態。いつもどおり背景は黒。
システム
ソフトウェア的な事について。
フォルダ管理
ソフトウェア的な大きな更新が、ディレクトリによるファイル管理が可能になった点。
DM10ではファイル保存ディレクトリがドライブ直下の「\POMERA」直下のみだったが、多階層フォルダに対応した。それにともない、ドライブのルート直下からファイルを配置することが可能になった。
今回DM20を購入するにあたって一番の動機となったのがこれだったりする。
また、ファイルの新規保存時、DM10ではファイル名欄は空になっていて、自分で手入力するか、ファイル一覧を選択することでファイル名を選ぶことになる。
DM20では「ファイル保存設定」があり、「デフォルトファイル名」として
- 「無題」
- 「文頭18文字」
- 「タイムスタンプ」
が選択できる。とくに「タイムスタンプ」がありがたい。
- [Ctrl]+[N]で新規ファイルを開く
- ガシガシ入力
- [Ctrl]+[S]で保存ダイアログを開く
- そのまま[enter]
この流れで重複しないファイル名で新しいファイルを追加できる。これは「パッと開いて、すぐ入力して、すぐ閉じる」というPomeraの根本的なコンセプトに合致する、非常にすばらしい機能追加だと思う。
編集ファイルサイズの増強
編集できるテキストファイルサイズが大幅にアップした。
まぁ、俺自身はあまり気になっていなかったのだけど、ワークエアに余裕ができたためか、大きなサイズのファイルを編集中でももたつくことが減ったと感じる。
空白表示キャラクタに対応
- 半角スペース → 半角幅の「△」(高さが1文字の半分)
- 全角スペース → 全角幅の「△」(高さが1文字の半分)
- TAB文字 → タブ幅分の空白に「→」が入っている
- 改行 → 一般的によく見る改行キャラクタ
どの代替キャラクタも一般的な全角キャラクタと被らない形で しかも細い線で表現されているので入力文字列との判別は容易。
QRコード対応
テキスト内容をQRコードに変換することで、携帯電話に転送することが可能になった。ただ、いくつかのiPhoneのQRコードリーダソフトで読み込みを試したが、文字数が多くなると読みとれないことがある。iPhoneのQRコードリーダソフトは条件によって読める・読めないの差が大きいようなのと、「のぞき見防止シート」を貼っているためカメラで液晶を撮影すると、この写真(これはiPhoneのカメラで撮影したもの)でわかるように画面端のコントラストが落ちて黒くなってしまう。
これについてはいろんな状況が重なっているため、これだけでQRコードの性能を判断することは控えたい。
キーバインドカスタム
なにげなくありがたいのが、キーバインドのカスタマイズが可能になったこと。特に[Ctrl]を[Caps]と置き換えられるのは、PCで同じキーバインドにしている自分にはぴったり。本当は[Caps]自体を殺して両方とも[Ctrl]になるともっとよかったんだけど・・・ま、さすがに贅沢かな、と。
アルカリ電池 - eneloopの切り替え
eneloopはDM10でも非公式ながら使えるらしいのだが、バッテリ残量の測定*1関連でいろいろと問題になっていたらしい。DM20ではその辺の電源マネージメントをアルカリ電池とeneloopでモード切り替えすることが可能になった・・・ということらしい。
現状アルカリ電池で運用している自分にはあまり関係ないけど、一応 公式にeneloopに対応したということで、選択肢が広がった、と。
カレンダーメモ機能
個人的な予想とは違う方向で追加されたのがカレンダーメモ機能。
DM10でもカレンダーを表示することはできたが、本当に表示するだけのもので殆ど使うことはなかった。
DM20では、カレンダーで日付を選択した状態で[enter]を押すと、その日付にひも付くテキストメモを入力することができる。
これ、俺にはあまり使い道が見つからないのだけど、Pomeraを日記帳や日報入力に使っている人には便利かもしれない。
この入力データもやはりテキストファイルで保存される。
DM10でWindowsPCにUSB接続すると
- 内蔵ストレージ
- SDカード(Pomeraに挿入している場合)
の2ドライブがマウントされたが、DM20ではこれらに加えて
- 内蔵ストレージその2
がマウントされる。ここにカレンダーメモで入力したデータが日付ファイル名のテキストファイルで保存されている。
機能追加してもPomeraはあくまで「テキストファイル入力専用機」ってことですな。
画面のローテイト
ちょっとおもしろいのが画面のローテイト機能が追加されたこと。
想定シーンとしては「液晶をテーブルと水平にした状態で、向かいに座った相手に見せる」ということだろう。
しかし「本当に画面反転するだけ」なので、入力している側の人間としては カーソルキーが上下左右になってしまうことになる。
おそらく表示反転したまま入力することは想定していないのだけど、タッチタイプになれた人なら「相手に入力中の画面を見せつつメモを取る」ということが可能だろう。
ま、使う人はたぶんそんなに居ないだろうけど・・・。
辞書関連
辞書ツールの細かいところ。
- 単語登録時、連続して登録することが可能になった(DM10ではひ一つ登録するごとに編集画面に戻っていた)
- DM10の辞書バックアップファイルをそのままインポートすることができる。
- 組み込み辞書に、大量の専門用語辞書が追加された。ユーザ設定で「使う使わない」を選択可能。
ネット上での声が強く反映されている。
今回書いた内容をみるとおわかりだろうが、DM20はDM10から比べると、さらに「PCのふつうのエディタ」に近づいた。
これらの改善案のほとんどは、ネット上のコミュニティ --- mixiのポメラコミュや、2ちゃんねるのポメラ関連のスレッド --- で挙がっていたものだ。KINGJIMの立石氏をはじめとするPomeraの開発者は、mixiポメラコミュのオフ会に参加しているし、かなり初期から2ちゃんねるの関連スレッド*2を見ていることをいろんなところで公言している。
Pomeraの当初のコンセプトは「議事録入力専用機」だが、ネットでの期待は「テキストエディタ専用機」だったわけだ。正直なところ、ここまでポメラ関連コミュニティの声が拾われていることに俺は驚いている。おそらく開発陣もPomeraの開発は暗中模索だったんだろう。ノイズも多いが、ネットコミュニティの声は素直だし、ヒントも多かったんじゃないだろうか。商品開発にあたっていろんな声を拾いすぎて肥大化してポシャるパターンは非常に多いが、もし「Pomeraはあくまで議事録取り機だ!」といって硬直していたらDM20は出てこなかった。そういう意味で非常に良い流れだと思う。
俺としても「テキストエディタ専用機」として期待していた機能が、DM10の1年を通して、DM20でやっと完成したと思っている。記事の頭でも触れたが、DM10を一年使っていたおかげでDM20の機能一覧を見て即決する気になれた。
「Pomera」としてこれ以上期待する物はないのだけど、開発陣には柔軟に対応してもらいたい。
もちろん通信機能は付けない方向で。