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傾斜ダイヤル

「前フリ」の最後のネタとして、以前書いた「傾斜ダイヤル」に関してと、最近試した「バーインデックス」について残しておこうと思ったのだが、まとめて一つの記事にするにはちょっと長くなりすぎたので、 当初の予定通り「傾斜ダイヤル」と「バーインデックス」で分ける。

「傾斜ダイヤルってどうなの?」

「ライダーズウォッチ」とか「ドライバーポジション」とか一般的な呼び方がよくわからないので、ここではそのまま「傾斜ダイヤル」と呼ぶことにする。
あと、「Riders」を日本語で「ライダー」と「ライダー」でゆらぎがあってどっちがいいのかわからんし、めんどくさいのでここでは混在するけど意味は一緒ってことでよろしく。

で、もう先に結論を書いてしまおうと思う。

結論:無理に傾斜してる必要は無い

「傾斜ダイヤル」とは

SEALANE SE54-MBKを選ぶときに悩んだのがSE53。
中身(ムーブメント)は同型だが、「ライダーズ ウオッチ」ということで傾斜ダイヤルになっている(さらに「ドライビングポジション」とも表現されている。あと方位ベゼルがついている。)

「傾斜ダイヤル」の時計をネットで探していくと、30°時計回り方向にダイヤル(文字盤)が傾いているものを指すようだ。首をかしげているって感じか。
傾斜角度はほとんどが30°だが、TERRA CIELO MARE 「SMOKY JOE」だと60°も傾いている。

傾ける意図としては、腕が水平でなくても「12時位置が真上にくる」からだそうな。運転ハンドルに手を掛けたりするときの角度と視線からの角度に合わせてあって「人間工学的にも優秀」とかそいうことらしい。おう、人間工学ですか。その割にはあまり種類を見ないんだけど。

一応、「傾斜ダイヤルはライダー的に良いの?」ということが主眼だが、もう一つの焦点としては、

本当に傾斜ダイヤルがバイク用としてあるいは人間工学的に優れているのなら、もっと普及しても良いはずじゃないのか?

ということである。

補足

海外ブランド(または海外デザイナーの時計具体的にはジウジアーロ)では「(四輪)レーサー向け」とか「ドライバー向け」としてデザインされた旨が書かれていたりする。
「ドライバー向け」として(少なくとも日本では)売られていないが、理由は単純な話。

  • 左ハンドル(右側通行)の海外のドライバーが左腕に着ける
  • シフトレバーは車体中央つまり右手で操作、左手は常にハンドル
  • 左手をハンドルから離さない→左手の腕時計の位置(角度)が定まるので、傾斜してると見やすい(という理屈)

日本では、

  • 右ハンドル(左側通行)の日本でもドライバーは左腕につける。
  • シフトレバーは車体中央つまり左手で操作、常にハンドルなのは右手。
  • 左手はシフトレバーになるので、位置が定まらないというか、左手を上げて見ればいいんじゃね?

バイクの場合、日本だろうと海外だろうと操作系は(ごく一部の車種をのぞき)、

  • 右手はスロットルとフロントブレーキレバー、左手はクラッチレバーになるので共通
  • 右手はスロットル操作のため手首を捻る形になるので、右腕に腕時計は邪魔になりがち
  • よって左腕につけるほうが良い(という理屈)

なので、日本では「ドライバーズ」と言うより「ライダーズ」といった方が「通りが良い」はず1だ。

試してみた

思考実験だけでなく、ちゃんと試してみた。試したんだよ?大昔だけど。
ちゃんと傾斜ダイヤルの時計も買ったんだよ?

Wancher Gurkha f:id:obally:20190425001416j:plain

  • 傾斜ダイヤル
  • 電池クオーツ
  • ケース:アルミ
  • 防水:5気圧
  • ラグ幅(カン幅):16mm
  • 標準ベルト:ナイロン(引き通し)
  • 購入日:忘れた(5年以上前)、6000円 程度だったと思う。

「Wanchar」というブランドが何屋なのかはよくわからんが、「Gurkha2」として後継機種が出てるあたりそれなりに人気はあったのかもしれない。とりあえずこの時計はカタログ落ちしている。

ダイヤルが傾斜している以外は普通のディスポーザブルウオッチ然としたクオーツ。ディスポ風なので風防は曲面プラ。チプカシ並に軽い。
12時が「0時」で赤字、各時もフルにアラビア数字で入っていて、これだけ見れば普通の時計として違和感が無いし、このデザインなら傾斜ダイヤル抜きにしても視認性は高い。
残念なことにラグ幅が16mmとレディース物ばりに細いので、バンドの選択肢が極端に限られてしまう。せめて18mmならNATOバンド選び放題で遊べたのに。バイク用として使うなら5気圧防水はちょっと心許ないけど。 今はもう電池切れで放置していたものだが、こっちでバックアップ用として使えないかと思って持ってきているので写真を載せるが、現在は使っていない。気が向いたら交換してみようと思う。

「傾斜してる必要が無い」

これをつけてツーリングにいったりして、試してみた。
ウェアの上から巻くには長さがチョット足りないので普通に。

結論はもう先に書いてしまっているが、

傾斜してると確かに見やすいと(一瞬)思った

が、

  • この時計を着けたばかりのころは、ちょっとだけ混乱する(今までと12時の角度が違うから)。
  • この時計を見慣れると「見やすい」と思う。特に12時(0時)が赤なので判りやすい
  • この時計を着けた後、普通の時計に戻すと、またちょっと混乱する(傾斜が30°左に戻ったから)。
  • でも、見慣れてくると普通に読める。(普通の時計だから)

ん?

  • 普通の時計から、別の時計を着ける。着けたばかりの頃は、ほんのちょっとだけ迷う(見慣れないから)。
  • すぐに慣れる(普通のダイヤル同士の切替だから早い)
  • 一つ前の普通の時計に切り替える。すぐになれる。

・・・これって、傾斜関係なくね?

時計そのものが見やすければ別に関係ないんじゃね?

そもそも・・・

そもそもだが、「バイク向け」という以前に、人は普段、腕時計で時間を確認するときに、『腕に着けたまま、毎回わざわざ、ダイヤルを目線と水平にして』見ているのだろうか?

目線と水平にして時間を確認するなら、以下のような動きになるはずだ。

  • 左肘を横に突き出す
  • 左腕を水平にする
  • そのまま腕を目線の高さ近くまで上げる
  • 長袖で時計が袖に隠れている場合は、右手で袖をずらす。

他人から見る画像イメージとしては、「バックトゥザフューチャー」の映画ポスターで主人公マーティーデロリアンの運転席に片足かけながらやっている、あのポーズに近い(あのポスターだと右手はゴーグルを上げているけど)。

自分、毎回こんなことしてるか?

毎朝、駅でこんなポーズしてるサラリーマン2みたことある?

普段は、もっとさりげなく、「サッ」と見ているはずで、

  • 左腕をちょっと前(腰の高さよりちょっと上)に出す。
  • 左腕に目線を落とす。
  • 長袖で時計が袖に隠れている場合は、右手で袖をずらす。

こんなもんじゃないだろうか?
この状況だと12時は左に傾いていることになるが、時刻は読める。

なぜ、「傾斜してる必要が無い」のか

なぜ、時刻が読めるのか。自分はここからは完全に素人の仮説になる。
こういうのは脳科学とか認知科学とかあるいは心理学とかそいういうジャンルになるのではないかと思うが、自分はどれも専門外だが、経験上、こういうことなのでは?

12時位置がはっきりしてるから判るんじゃねぇの?

紙に鉛筆(なりペンなりなんでもいいが)で「時計の絵を描いて」と言われたら、ほとんどの人は、

  1. ◯を書く。律儀な人はもしかすると十字に線を入れたり真ん中に点を入れるかもしれない。
  2. 丸の上頂点に12を書く。
  3. 次は下頂点に6を書いて、続けて右に3、左に9と書く
  4. その後、12と3の間に1と2を、3と6の間に(以下略

こんな感じじゃないだろうか。

人間の方向や角度の基準として、上下左右あるいは前後左右がベースになっているから、上または前方=12時、下または後方(あるいは手前)=6時という認識は人類共通のハズだ(もちろんアナログ時計の概念が無い文化の人には通じないだろうが)。
この上下左右の基準線が、いま腕に付けている時計にはどの方向になっているかあらかじめ把握しているなら、文字盤を見たときに脳内で傾斜を補正しているのではないか、ということだ。

壁に掛かっている掛け時計が多少横に傾いていても、大概の人はそのまま読むことが出来る3。これと同じではないか。さらにに自分が持っている(好みの)時計の文字盤は大体アラビア数字が振ってあるため、文字盤と針が見えればそれはもう自明だし、数字の降ってない文字盤よりは判りやすいはずだ。

傾斜ダイヤルの時計と普通の時計を交換したとき、「ちょっと混乱」していたのは、自分の腕の位置・角度から「時計の12時位置の傾斜度」を無意識に判断していた→今までと違う傾斜度になったので、脳内の補正パラメータが変わって混乱した、のではないか。
傾斜角のパラメータが脳の補正に定着すれば、傾斜しててもして無くても補正が働くので問題ない。

つまり、傾斜していても傾斜していなくても大差なくね?

もっと、もっとそれ以前の話で・・・

走行中に腕時計をガン見すること自体、そうそうない。つーかちゃんと前見て運転しろや。

バイクに乗ってて腕時計を見るのは、信号待ちとか休憩前後に停車しているときなど、結局は走行していないときだ。SE53の公式ページの左上の写真(申し訳ないが他にメーカーの公式の写真しかないので挙げているが、別にSEALANEをディスっているわけじゃ無い)をよく見ると、左手のグローブの裾をめくっている。ということは右手で裾をめくっているはずで、逆に言えばメーカーとしても「走行中に見やすいですよ」とは言っていないことになる。そりゃ「運転しながらよそ見を推奨」と取られかねないもんな

停車中に腕時計を見るんであれば、ギアをニュートラルにして足をついて、右手でグローブの裾をめくって見ればいい。そのとき別に左グリップに手を置いてようが、手を離して普通に見ていようが普通の時計となんら変わらない
停車中に左グリップに手を置かなくてはいけないとするなら、ギアを入れたままクラッチレバーを握ってクラッチを切らなくてはいけないからだろうと想像するが、グローブをめくるため右手を離すぐらいの状況なら、ギアをニュートラルにいれることは別に苦にはならん。

Q:「それでもギアをニュートラルに入れるのがめんどくさいんじゃぁ!」
A: スクーターかAT車かDCT車に乗れ。

Q:「意地でも走行中に時間を見たいんじゃぁぁぁ!」
A:ハンドルバーかどっかに時計付けろ。

つか、最近のバイクは大体メーターに時計ついてると思うけど・・・。

「(前略)もっと普及しても良いはずじゃ?」の答え

  1. 世の中の腕時計は「傾斜ナシ」がほとんどである。
  2. また、人類はすでに「傾斜ナシ」のダイヤルに、十分慣れている。
  3. つまり、「傾斜アリ」の必要性を感じていない。
  4. よって、「傾斜アリ」の需要が少ないため、売れない。
  5. ゆえに、「傾斜アリ」の時計が普及していない。

あ、あと、腕時計を右腕に付けると、右傾斜の文字盤はさらに傾斜してほぼ80°ぐらい右に横倒しになってしまうんで、左利きの人や、意図的に右手に付けたい人にはまったく意味のないものですな。

と、まぁ、そんなこんなで

わざわざ傾斜ダイヤルの時計を選ぶ必要性が、今のところ、無い。

でも結局の所「慣れ」話なだけであって、「傾斜ダイヤル死すべし!」とは思っていない。
傾斜ダイヤルで「おぉぉぉぉぉコレマジかっけぇぇ!」な時計が見つかったら、俺も欲しくなるかもしれないし。

ただし、「傾斜ダイヤルだからコレライダー向けだろぉ~バイクよー知らんけど」みたいな話が出てきたら「この素人がwwwww」と(心の中で)返してあげようと思う(どこ目線4だ)。


  1. 古い記憶だが、日本のドライバー向けに右腕に付けること前提の傾斜ダイヤルの時計があった気がする。モノマガジンかなにかに載っていて、それがちょうど自分が運転免許が取れる頃に(高校生)だったのでもう20年以上前のはずだ。なので詳細は忘れた。

  2. いや、居ないわけじゃ無いけど、あれをやるときって経験上、(右手に鞄持ってるときとか)腕を一旦上に勢いよく上げてスーツの裾を肘側にずらすためであって、腕を水平にするためじゃないような。(それか「わし急いでますからねアピール」か「俺の時計をもっと見てくれぇぇぇ」かな)

  3. もしかしたら「ちょっと傾いているのが気になって時刻を読むどころじゃねぇ!」っていう神経質な人はいるかもしれないけど。

  4. 『バイク知らない時計屋店員に傾斜ダイヤルを勧められたバイク乗りの客』目線。