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「VICTORINOX サイバーツール 29T」


どうしてそこでスイスツールに行かなかったのか

PSTはドライバー類が心許ない。
Spyderenchじゃ付属ビットが大きすぎるし、もっと小さいヤツも欲しい。
このころ、自作PCをいじり始めたこともあり、もっと細かいツールドライバーがほしくなっていた。


と、そこへコイツが出たわけですよ。

レビュー

VICTORINOXは、各モデルに「ファーマー」だとか「フィッシャーマン」みたいな感じの名前を付けて、それ向けのファンクションを装備したツールナイフを出していることが多い。
ただし、ネーミングは「農業従事者が使いそうな機能」だったり、「釣り人が使いそうな機能」が盛り込まれているだけで、実際にそれが使いやすいかどうか、使うことがあるか、不要な機能は無いか、という点は考慮されていない気がする。もしかすると「まず機能ありき」でネーミングはあとからついてくる物なのかもしれない。
なので、「そのネーミングでは過剰」だと思われる機能がついていたり、「そのネーミングならどう考えても必要」な機能がなかったりする。

ツールナイフといえばVICTORINOXWENGERが代名詞であっても俺がそれまで手を出さなかった理由はそこにある。


この「サイバーツール」シリーズはPCイジリや電子工作向けをイメージして出てきたモデル。出た当時としては、ハンドルがクリアーでかなり異質な印象があったが、最近では普通に使われているな。デフォルトでトルクスレンチが入っているのが気に入って購入した。


当時、「サイバーツール」シリーズには無印と「29T」という二種類がラインナップされており*1、他のシリーズとの大きな違いはビット式ドライバーとビットボックスを内蔵している点。無印と「29T」の違いは、プライヤー・はさみ・マルチフックがついているかいないか。

俺が購入したのはハンドルがクリアブルーの「29T」。プライヤーはすでにPSTがあるし、はさみやマルチフックも「PCイジリや電子工作で必要か?」を考えれば「いや別になくてもなんとでもなるんじゃね?」となり、無印にある機能の分ハンドルが分厚くなる事を考えたら、必然的に「29T」を選ぶことになった。

不要な機能といえば缶切りと栓抜きがついているが、これは先端についたマイナスドライバー大小のためだろう。これらはドライバーというよりスクレーパー的な使い方の方が活躍することが多い。ガジェットを分解するとき、プラスティックの筐体をこじ開けるのに使ったりね。あと、栓抜きにはワイヤストリッパーがついている。


「ならばワインオープナー(コルクスクリュー)の必要性は?プラスドライバーの方がよくね?」
という話になる訳だが・・・・。


おそらくこの「メガネドライバー」を装着するため「だけ」にあるのではないか、と(勝手に)考えている*2。このような極小のドライバーをつけているツールナイフは少ない。本来はコルクスクリューだけどコイツに限ってはメガネドライバホルダー。どうせならプラスのメガネドライバーが欲しかったけど、意外とコレ使うんだよね。(メガネドライバというより、なにかを突っついたりするのに)


それにしてもこのメガネドライバー、本当によく考えたもんだよなぁ、と思う。通常サイズのVICTORINOXを手に入れてみて、この「無駄なスペースがあったら、ともかくそこになにか機能をブチ込んでみる」という、意地というか執念というかはすごいもんだと感心する。もう、ほとんどパラノイアに近いんじゃないだろうか。

つい最近まで気がつかなかった機能がある。
この記事を書くためにコルクスクリューをいじっていたときにみつけた。



ピボットの根本に金属のリベットのように見えた物が、実はこいつは引っ張り出すことができた。


なんだろうこれ・・・。いわゆる「虫ピン」というヤツだろうか?改めて公式サイトを確認したところ、単に「ピン」となっている。

本来の機能としては何のためだろう。わざわざこんなところにひっそりと配置されているのだろうか。ボールペンやピンセットのように外側に付けられなかった、あるいは置き換えにならなかった理由はなんだろう。しかもこのピンはこの1本だけ。これでどうしろと・・・。つか普通気がつかねぇよコレ。

ピンの用途を考えてみたが、まさか

「昆虫採集して標本を作るのに虫ピンが足りなかったら使う」

ってわけでもないだろう、さすがに。

つまようじ代わりならハンドル側にプラスティックのトゥースピックがついている。

衣服を補修するときにマチ針代わりとか・・・針ほど尖ってないが、これはありそうな気がする。


・・・わからん!!!これをつけたヤツの意図が俺には解らん!!!

あ、ブレッドボード回路を組んでるときに、金メッキピンの代用にはなるかも・・・。

↓イメージ図

うん、これだな。まちがいない。こういうことにしておこう。(思考停止)



脱線してしまった。話をサイバーツールの目玉機能「ビットドライバ」に戻す。


全機能のリストについては公式を見てもらうとして、ビットをつける部分は5mmのナット用ボックスレンチだが、奥が4mmヘキサの二段式になっている。ビットホルダとボックスレンチに格納されているビットはリバーシブルで全種類は以下の通り。

  • ヘックスビット 4mm & トルクスビット #8
  • プラスビット #0 & プラスビット #1
  • プラスビット #2 & マイナスビット 4mm
  • トルクスビット #10 & トルクスビット #15


※公式サイトではプラスビットを「フィリップスビット」、マイナスビットを「スロットビット」と表記しているが、これはスイスでの呼び方なんだろうか?

これと、ボックスレンチがそのままレンチとして使える。


俺が購入した頃はこのサイズのビットはなかなか見なかったが、最近はホームセンターで購入できるので、入っているビットが気に入らなければ差し替えることもできなくはない。

俺はビットのうち両方がトルクスの物を紛失してしまった。市販品を探したが、これについているものと同様のリバーシブルタイプは見かけない。また、各ビットは、「ビット側に」ボールロックがついており、装着すると自然に抜け落ちることははないが、このサイズでボールロックが入った汎用製品は見たことがない*3

ビットの取りそろえはPCなどでよく使われるものに絞られている。4mm系より大きいものなら、通常工具を使えって事だろう。まぁそれならそこら辺で普通に売ってるサイズなので、精密ドライバーの範疇を中心にしているのは合理的といえるかも。



ボックスレンチのシャフトは、他のツールと同じくスリップジョイント。強く押しつけながら回そうするときに不安ではあるが、ナイフよりもかなり堅いスプリングになっているらしく、使っているときに勝手に折り畳まれたりするような状況は発生していない。180°全開にした状態でも使うのはもちろん、90°でもスナップがかかるようになっていて結構便利。



スリップジョイントといえば、こいつにはスリップジョイントのナイフが2種類ついている。通常のメインブレードと小さめのスモールブレード。どちらも使うかというと


・・・使わないな・・・メインブレードの方は。


日常のほとんどの場合、メインブレードの大きさが必要になることはなく、スモールブレードで十分。必要になったとしても、サイバーツールよりレザーマンや他のロック付きナイフをつかってしまう。



そもそも、各ツールが並列に並んだツールナイフの場合、ブレードが配置されている場所がハンドルの端っこになっており、使いやすさの妨げになっている。特にサイバーツールはハンドルの右側にオフセットされているので、鉛筆を削るような作業ではハンドルの膨らんだほうを部材側にしなければいけない。


どんなナイフでも基本的に同じだと思うのだけど、右利き用につくられたナイフの場合、膨らんだ側は「掌側」に当たるように(ブレードの背を見た状態で右側に)なっている。最近のベルトクリップ付きフォールディングナイフなら膨らんだ部分に相当するベルトクリップは掌側になる。


もっとわかりやすいのが、リンゴかジャガイモの皮むきを考えればいい。皮むきをする場合、左手でリンゴを持ち、右手でナイフを持って、親指で皮を送りながら向いていく。ブレードの左側が膨らんでいるという事は、ブレードと親指までの間が大きくなり、細かい制御がやりづらい、ということ。



その点でいくと、スモールブレードはメインブレードと同じ並びになっているので、メインブレードとは逆になる。

「29T」程度のハンドルの厚さですらすでにそうなのだから、無印や、VICTORINOXのフラッグシップ「チャンプ」なんかじゃ言わずもがな、だろうな。正直「チャンプ」って、持ってる人は使いやすいと思って使ってるとはとうてい思えない。

ロックが無いスリップジョイントなのもしかり。ブレードのロックについてはいずれまとめて解説するつもり。


使わない機能が多く、かといってメインであるナイフが使いづらい。レザーマンより冗長に感じるもの、どの機能も精度が高く、開いたときの「カチッと感」はレザーマンがどれだけがんばっても追いつけないだろう。そこは歴史の長さが違うし、アメリカとスイスというお国柄の違いでもあるだろう。

質実堅固でシンプルなアメリカと高精度なスイス、いいとこどりしたものはないのだろうか、と思ってたらVICTORINOXとBUCKがコラボった「SWISS BACK」なんてのもあったりするが・・・


まぁともかく、サイバーツールはしばらく使っていたが、こいつも結局第一線を退いて、サブのツールとして机の引き出しに入った。ときどき細かな作業をするときには引っ張り出して使うこともあるが、最近の出番はほとんど無い。一番最後に使ったのは、今のアパートに引っ越ししてすぐに、スモールブレードでネーブルの皮むきをしたぐらいか。ナイフでは工具的な使い方をすることが多いので、食い物を切るときにはコイツ(工具として使ってないから)を使えば、すくなくともオイルやグリスや鉄粉が食い物につくことはないからな。



そして、ここまでに紹介したツールナイフをまとめてお役御免にしたツールナイフを次回紹介することになる。

Spec

  • メーカー : VICTORINOX
  • モデル名 : CYBER TOOL 29T
  • タイプ:ツールナイフ
  • 製造年・ロット :不明
  • MADE IN : SWITZERLAND
  • ロックタイプ :スリップジョイント
  • ブレード素材 :不明(非公開)
  • ブレード長(※) :67 mm
  • ハンドル素材 :プラスティック
  • ハンドル長(折りたたみ長) :90 mm
  • 購入価格 :失念

※ブレード先端(ポイント)からピボットピン中心に向かってグリップ根元までの長さ。銃刀法における定義とは違うので注意。

余談

  • サイバーツール 29Tのハンドルの厚みは21mm。
  • フラッグシップモデルの「スイスチャンプ」の厚さは33mmだとか・・・。

*1:現在ではルーペとかLEDライト付きがあるらしいが。

*2:もっとも、「GEEKが好む酒はワイン」というようなアンケートもあるようだし、もしかすると日本以外の使用者にはワインオープナーが必要なのかもしれない。俺はT字型コルク抜きは好きではなく、ソムリエナイフタイプの方が好みなので使わないが。

*3:公式サイトから補修部品としてビットを取り寄せることはできる。